月別: 2023年9月

時代は巡る

2023.09.20

最近、同級生と逢って会話をする中で、決まり文句があります。それは、「もうええ歳やなあ、お互いに」であります。私たち同級生は、例外なく今年以降に古稀の年齢を迎えるのであります。思えば歳をとったもんだ、ということなのですが、これまでは、あまり各自とも歳をとったという自覚はなく、どちらかというと気持ちだけでモチベーションを保っていたのです。しかしながら、世間は残酷なもので、様々な身体の異変が出始め、医療のお世話になることが増えてくると、その会話の中身は、病状の解説に終始していくのです。その病変も大病になると世間話では済まないのですが、小病気の場合は、お互いを慰めあう程度の日常会話に終始するのです。特に、サプリメントの話になると、大きく花が咲きます。ひざ痛にはこれ、血糖値対策にはあれ、血圧にはそれ、というように、あたかも健康食品メーカーのコマーシャル俳優の如く、饒舌に話し始めるのであります。昨今、この手の健康サプリメントは、大企業の製薬会社も力を入れており、大小入り乱れて販売合戦を繰り広げているのは、皆さんご存じの通りです。薬事法には抵触しない健康食品という分類である限り、それらしい効能をアピールして、購買に結び付ける手法は、なにやら怪しげであるとは感じながら、処方箋なしで買える手軽さと共に、飛びついてしまうのです。よくよく考えると、飛びつくということは、不安の裏返しそのものであり、決してルンルン気分で買っているわけではないのです。おまじないとは言いませんが、地獄の淵から一閃したクモの糸にすがる亡者の心境なのかもしれません。それにしても老人の健康不安に乗じて商売する不逞の輩には、本来、正義の鉄槌を見舞わなければならないのですが、溺れる者は藁をもつかむ、そんな心境なのでありましょうか。老人は、肉体も弱るのですが、心も徐々に弱るのであります。しかーし、まだまだ青春の領域も残っているのであります。それは、昔話に花が咲くときであります。昔話の自分たちは、必ず若いままなのであります。何十年たっても話の中では青春しているのです。それも、ついこの間のように、鮮明に思い出せるのです。もちろん、友人同士の話だけではありません。自分の子供たちの幼いころの思い出や、学生時代の天衣無縫な出来事など、やっぱり楽しかったことを中心に鮮明に心に残っています。当然のことながら、砂を噛むような苦い思い出も沢山あります。思い出とはそういうことで、良くも悪くも心を揺さぶる出来事が、潜在意識として残っていくのであります。心に残るのは、あながち自分の身の回りだけのことだけではありません。映画好きの私には、感動した映画の一場面も記憶に残っています。若いころに好きだったスティーブ・マックイーンの映画の名場面も多く残っています。パピヨンで脱獄するために静かな海をひとり泳ぐ場面、ブリットでサンフランシスコの急坂をカーチェイスで激走するシーン、大脱走では、オートバイを華麗に操って逃走する場面など。また、ゲッタウェイでアリー・マッグロウと逃走するシーンも印象的でした。映画だけではなく、スポーツの感動シーンも記憶に新しいのです。円谷幸吉が昭和の東京オリンピックのマラソンで銅メダルと獲ったとき、東洋の魔女がバレーボールで金メダルを獲った場面、1985年に阪神タイガースが日本一になった各試合など、もう38年前だとは思えないほど鮮明な記憶で残っているのです。さて今年はどうなるのでしょうか?70年の記憶をたどるためには本来70年必要です。しかし、実際はそんな必要性はなく、ダイジェストで思い出せば良いことではあります。皆さんの記憶の中にも様々な思い出があることでしょう。嫌な思い出は、隅の隅に追いやって、本当に楽しかった思い出をゆっくり引き出していってみては如何ですか。世間では、人生100年時代などと言いますが、それは極論なのであります。元気である時間は限られています。しかし、楽しい思い出を引き出す時間はたっぷりあります。健康に最大限の意識を払い、今一度、青春時代を走馬燈のように思い出してみては如何でしょうか。