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青天の霹靂

2020.05.20

「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった。」これは、川端康成のあの有名な小説、雪国の一節です。この一説には多くの比喩が含まれています。小説の中身は読んでいただくしかないのですが、概ね、島村というひとりの妻子ある男と温泉地の芸者の駒子との物語です。小説の内容は別としても、このフレーズにコロナ禍の現状をオーバーラップさせてしまう今日この頃です。普段の生活を一変させてしまったコロナウィルスが、世界中の人々を浸潤して、世界の経済さえも凌駕してしまっています。今も、日本も世界も暗く長いトンネルの中にいる状況です。果たして、トンネルを抜けて明るくなるのはいつになるのでしょうか。マスクが無い、除菌液も無い、防護服も足りない、この無いない尽くしに加えて、PCR検査も整わない、隔離環境も整備されない現状で、厳しい生活環境をまだまだ過ごさねばならないのです。日常のリズムの激変がもたらすものは、ストレスや怒気の蔓延です。例えば、ニュースが伝えているのは、ある観光地で、他府県ナンバーを見つけただけで、その車のサイドミラーを故意につぶしたり、張り紙をする嫌がらせです。アメリカでは、食料品店でマスクを義務付けていたにも拘らず、マスクをしていない者に警備員が注意をしただけで、ピストルで頭を打ち抜いたなどという凄惨な事件も発生しているのです。これは明らかに人権の無視であり、コロナ禍に悪乗りした人間自体のエゴであり、過剰なニセ恐怖心でもあるのです。コロナウィルスが直接的に、間接的に人体のあらゆる部分を蝕んでいっているのです。そんな人間心理を改善していくにはどうすればよいのでしょうか。最も即効性のあるのは、一刻も早く治療薬が確立されることでしょう。そして、有効なワクチンの開発でもあります。アビガンやレムデシビルの治験効果が色々伝えられていますが、まだ特効薬のレベルではありません。しかし、世界中のハイレベルな製薬会社が、こぞって創薬に注力している現実を見据えると、予想よりも早く治療薬が出てくるのではないかと、大いなる希望的観測で日々をしのいでいます。どの観光地もゴールデンウイーク中の賑わいは全く無く、むしろゴーストタウンと化していました。新幹線の乗車率は数パーセント、飛行機の欠航は8割、高速道路の混雑は皆無、こんな光景をだれが想像していたでしょう。インフルエンザで学級閉鎖、学校閉鎖は経験しましたが、誰もが生涯初めての経験だったのです。まだ、小学1年生はランドセルを背負っていないのです。中学生高校生も、まだクラブ活動もしていないのです。大学生も受験を乗り越えて夢見た大学の講義を受けていないのです。社会人1年生も内定取り消しや採用中止になっているとも聞きます。自然災害以外でこんな苦境が訪れるとは思いもよりませんでした。いや、コロナ禍も自然災害に該当するのかもしれません。自然災害であると信じたいものです。
仕事の在り方も随分変わりました。密集を避けるための時間差出勤、在宅でできる仕事のためのテレワークなど、くしくもICT、IoTの技術革新が役に立つこととなりました。在宅での仕事とともに、テレビなどのマス媒体も三密を避けるための遠隔出演が日常的になりました。そうそう、そんなことができるのであれば出演に伴う高いギャラや移動経費を圧縮して、医療関係にそんな費用を寄付していただけないのかと考えてしまうのは、庶民の単純な発想でしかないのでしょうか。大阪にはまだアベノマスクは届いていません。送られてきても箪笥の肥やしにならぬようにしたいと思いますが、寄付に値するマスクであるならば必要とされる先に贈りたいと思います。必要とされるのであれば、ですよ。ネット上では手作りマスクの作り方の動画も多く流れています。いつも違和感を感じるのですが、東京都知事のしているようなマスクをいっちょう作りますか。潔く、明るく、笑える材料を色々探しましょう。笑い飛ばして終息するまで戦い抜きましょう。欲しがりません、勝つまでは!トンネルを抜けると青空が広がっていますように。