虎穴に入らずんば虎子を得ず

2024.02.20

 今月から球春を告げるプロ野球のキャンプが始まりました。昨年は、我がタイガースが、38年ぶりの日本一となり、感涙の美酒におぼれたのでありました。永らく忘れていた勝ち切るということの、その感情の置き所を思い出して、精神的に非常に豊かに過ごせた年末でありました。テレビを観ていても、タイガースの各選手がたくさんの番組に出て、やっと全国区の有名人になったのでありました。やはり、勝負事というものは勝つことによってその環境が大きく変わっていくのです。それにしても38年ぶりの快挙は、どのような化学変化で起こったのでしょうか。最も大きい要因は、やはり監督の存在でしょうか。岡田彰布という監督の存在が、チームの勝利に大きな存在感をもたらしたのではないでしょうか。なぜなら、その戦力を見た場合、前任監督時代の戦力をほぼ引き継いだ状態にもかかわらず、優勝できる勝利数を達成したのですから、何が違うのかといわれた場合、第一に納得できるのは、岡田監督の存在であるわけです。監督という仕事に必要なことは、現在の戦力をどう活用するかということであります。ピンチの時に監督が打席に立つわけではなく、また、守備の時に自分がマウンドに立って投球するわけではありません。いくら将棋の駒が揃っていても指し手の戦略が無ければ将棋も勝てないのです。そういえば岡田監督は、将棋が大好きで、将棋の勝負も大変強いということです。だから、将棋に例えると、駒は同じでもその動かし方次第で勝負が左右され、勝ち負けしかない野球の結果も勝利に結びつけられるのであります。まさに現在でいうと藤井聡太氏が、野球の監督をしているようなものなのです。中国にその昔、孫氏の兵法というものがありました。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」これは、戦う場合には、敵と味方の両方の情勢をよく知った上で戦ったならば、何度戦っても敗れることはないということを意味するのです。野球もまさにこの通りで、自分のチームの戦力を知り、相手方の戦力を知ったならば、おのずと戦い方が決まるということなのです。昨年のタイガースの戦力は、20~30代前半という誠に若い戦力でありました。そして監督自身は60代半ば、まさに、親子ほどの年齢差がありましたが、みんな笛吹けば踊ったのであります。ここには、岡田監督の細やかな気遣いがあったように思います。前回監督をされていたころは、まだ40代半ばでありました。まだまだ血気盛んで、選手たちとの年齢差も小さく、兄貴的存在であったと思います。しかし、今回は、Z世代だけではないですが、全くと言っていいほど年齢差による文化の違いがある選手たちとコミュニケーションをとりながら、意思の疎通を図りながら、シーズンを戦われたわけです。では、なぜ文化が違う若い選手たちが、監督の意図を理解して、打って、走って、投げまくったのでしょうか。それは、一つだけの目標に向かって明確な意思の疎通ができたからだと思います。そう、アレです。なぜアレだったのか。優勝というものは、みんなが目指す、みんなが分かっている目標なわけです。それをあえて、アレにしたのは、優勝という言葉で力ませないように、選手各自の力をフルに出せるように、無駄な執着をさせずに勝つという楽しさを実感させるための手段であったと思います。佐藤輝明という才能に恵まれた選手がいます。彼は、豊かな才能を持ち合わせているのですが、如何せん、体力がなく毎年シーズン途中で重大なスランプに陥ります。なぜか。彼は練習嫌いなのであります。メジャーに憧れ、先ずは格好から入り、体力とか持久力とか、そんなものを会得していくことが二の次になっていたのです。それを知った岡田監督は、ことあるごとに叱咤して、その都度たしなめていたのです。そう、怒られて育つタイプであることを見抜いていたのです。こんなところにも岡田監督の監督としての資質を感じずにはいられませんでした。今年のシーズンも岡田語録が楽しみです。皆さんも是非岡田監督のメッセージの数々を楽しみにしておいてください。いやいや、おーん、今年もアレンパするで、ほんまに。