サプリメントの功罪
2024.04.20
春とはいえまだ花冷えの残る4月であります。昨年は、自身の病気療養のため、桜の花見は、病室の窓越しでありました。療養は順調ではありましたが、花見に行き交う人々が、誠に羨ましく思えた時期でありました。今年は、今現在の4月初旬、近所の桜並木の下を少し冷えた空気を感じながら、咲き始めた桜の花びらをじっくりと観て通り過ぎるこの気持ちは、ほっとすると同時に、やはり健康が大事と心底思えるのであります。どんな素敵な出来事があっても、心身が病んでいては心から喜ぶことができないでしょう。若いころは、健康診断すら軽視して、少々の無茶は効くという馬鹿げた自負を持つことで強がっていたのでありますが、老年の領域に差し掛かるともはや、無茶が効かぬどころか、体の老化現象は、矢の速さほどに進んでいくのです。万人が例外なくこの老化現象とやらに行きつくのであります。しかし、瓢箪から駒と言いますか、そのせいで健康を気遣う食物の摂取ですとか、ひざ痛を発端として、適度な運動への取り組みなど良いことにも目覚めるのです。老齢にして目覚めるなどというと、きっと若い人たちに笑われるかもしれませんが、先が短いが故に、その時間の密度は濃いのであります。知らんけど。 先日来、某薬品会社のサプリメントで騒動が起きています。販売したサプリメントが原因で腎臓障害を発症して、死者まで出ているとのことです。まさに本末転倒なのであります。健康を補助するのがサプリメントであるにもかかわらず、正反対の薬害として人の生命を脅かすなどということは、許されることではありません。この当事者企業は、様々な生活関連のサプリメントや薬品をこれまで提供してきた企業であります。その独特なネーミング手法で世に送り出した商品の存在を知らない国民は皆無でしょう。そんな企業が、今回のような不祥事を起こしてしまうわけです。大企業であっても一つの事件によって国民からの信頼を失墜することは、往々にして起こるのであります。赤ちゃん向けの粉ミルクにヒ素を混入させた森永ミルク事件、多くのイタイイタイ病を発症させた三井金属鉱業、カネミ油症として広げてしまったカネミ倉庫、雪印乳業による広域の食中毒事件など、多くの被害者を出し、そして、業績が急行直下で悪化していったのです。話を戻すのですが、今回、事件の発端となったサプリは、医薬品ではないので誰でもが購入出来て、摂取できるわけです。そもそも、自分の体のどこかに異変があり、医者にかかることに加え、日常的に経口摂取をして症状を緩和させたり、治癒への補助的な役割を果たす物なのであります。そのサプリという分類の、いわば食品的なもので健康を害するということは、まさに青天の霹靂なのです。膝が痛い、コレステロール値が高い、血圧が高い、血糖値が高い、頻繁に尿意を催す、視力が落ちた、など、こんな症状は、高齢になればだれでも出てくることなのです。そして、ご多分に漏れず、これらの症状で不安を覚えると主治医の処方する薬以外にも欲をかいてサプリに依存するわけです。考えてみれば、そんな錠剤のようなもので成果が表れれば誠に嬉しい限りです。しかし、大抵は少し効果があるかな、ぐらいの、ほぼ思い込み程度の結果に至るだけなのです。健康に関する本を読むと、異口同音に体のためになるものは、普段の食事で採れると書いてあります。それは、誠に当然なことです。太古の昔から人類は、食物によってあらゆる栄養を取り来んで、そして自分の身体を維持してきたのであります。人類の草創期は、どういう物質が人間のどの部分に作用しているかなど知るすべもなかったのです。現代は、あまりにも知識が集積されて、氾濫して、迷路にはまって行っているのではないでしょうか。いや、そんな環境だからこそ、大病を患っても救命して頂けるのですが、やはり度が過ぎると正反対の生存から絶命に行ってしまうこともあるという恐ろしい今回の事件であります。